本物件は中野区の市街地において、等価交換を含む土地の有効活用による分譲マンションの建設が目的であり、権利者に対して所有地の売却、立退き、または立体買い換えの提案を選定いただくという難易度の高い事業でした。本敷地の権利者は底地権者・借地権者・借家人・店舗経営者・相続人等、併せて16人におよび、全員への事業説明から用地取得に至るまで、実に3年近くの歳月を費やしております。
またそれら権利者のうちの5人は等価交換を希望していたため、居住階・間取り等の合意を得た上で事業計画を推し進めてまいりました。
事業計画においては、「新中野駅徒歩3分」という立地から単身者・ディンクス世帯をメインターゲットとする一方、ファミリー世帯も一部取り込めるような販売面積の設定をしております。主に35㎡・40㎡・50㎡・60㎡の4タイプにて構成し、間取りについては1LDKから3LDKまで用意した上で、2LDKと3LDKについてはセレクト間取りの提案も行いました。特に40㎡の住戸については、1LDK・35㎡の住戸との差別化を図るために可動式収納棚を採用するなど、1LDKから2LDKまで家族の成長に合わせ間取りが変更できる計画としております。

外観デザインについては無彩色の磁器質タイル貼りとし、2色のモノトーンタイルと4種類のボーダーストライプによる6種類の貼り方で壁面を装飾しております。これによりモノトーンでありながらも深みのある陰影が生まれ、高級感のある建物演出ができました。
プランニングについては、住戸の主開口が極力南側を向くような配置とすることで眺望及び日照に配慮しました。また、東側に主開口をもつEタイプについては、販売面積及び販売価格を抑えるため35㎡の1LDKとして計画することで、早期完売を図りました。
間取りについては、共用部の廊下を各住戸に食い込ませることにより住戸内の玄関ホール及びリビングまでの廊下面積の最少化を図り、室内レンタブル比の向上と効率的な居室面積の確保に注力しました。例えば、Cタイプの3LDK・60.98㎡の住戸については10.8帖の広々としたリビングのほかに6帖1室・4帖2室を設け、合計で24.8帖の居室が確保できております。
なお、すべての住戸で季節ものを丸ごと交換・収納できるアッパーキャビネットを標準装備することで収納容量の大幅な向上を図りました。
また、リビングに隣接する洋室については、スライディングウォールを採用することでリビングと一体で利用できる計画とし、入居者のニーズに合わせた家具レイアウトができる間取りとしました。
外構計画については、アプローチ部分において2m近い化粧壁と高木を設け、隣地建物との視界を明確に分離することで、エントランス空間へと向かうシークエンスの雰囲気や高級感を高める計画としました。
また、エントランスでは、アプローチ、風除室までは重厚な黒を中心としたダークな空間とし、オートロックを開けると一転して、床、壁、天井が真白な空間となるドラマティックな演出を計画しました。

本物件は2014年の5月よりモデルルームにて建物完成前販売を開始したところ、6か月という短期間にて値引きなしでの全戸完売を達成いたしました。
当時販売中であった周辺物件の分譲価格より割高で、なおかつ新中野駅徒歩圏内では最高値の販売坪単価でしたが、弊社の徹底した「入居者目線でのものづくり」を購入者に理解していただいた結果が早期完売に結びついたのだと確信しております。また、建物竣工時には入居者の方々より、外観デザインの存在感とエントランス空間、そして間取りについて高く評価していただきました。
なお、全戸完売までに総来場255組に対して14.5%と高い成約歩留まりを得た結果からも、ターゲット層のモデルルームへの来場意欲及び購入意欲の向上を図ることに成功したと言えます。