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令和3年 年頭所感

一般社団法人 全国住宅産業協会
会長 馬 場 研 治

謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
 昨年は、新型コロナウイルス感染症の世界的感染蔓延により、これまでに経験したことのない緊張と不安が続く1年になり、人や物が世界中を駆け巡っている現代社会の弱点を痛感することとなりました。新型コロナウイルス感染症に罹患された方々に謹んでお見舞い申し上げますとともに、感染拡大の治療・防止に尽力されている医療関係者を始めとした多くの皆様に心より敬意を表します。
 新しい年は、国内はもとより諸外国との連携の下、一刻も早くコロナ禍から脱却し、人々が安心して暮らせる1年になることを強く祈る次第です。私共も国民の日常生活と深く関わる住宅を供給する事業者として、感染防止や新しい生活様式に対応した住環境を創造することを通じて役割を果たしてまいります。
 経済状況を見ますと、国内外の諸活動が停滞したことにより、雇用情勢の悪化、所得の減少、消費の減退という悪循環に陥り、着工戸数の長期にわたる減少など住宅市場も低迷しています。併せて建設コストの高止まりと事業用地の取得難から新築住宅の価格は年々上昇し、住宅取得を希望する若年層を始め庶民の所得とは大きな乖離が生じています。
 政府は数次にわたる経済対策を打ち出し、感染拡大防止と経済活動の活性化を継続していますが、事態が収束するまでには時間を要することが予想されますので、切れ目のない対策を期待するところです。
 昨年12月に発表された令和3年度税制改正大綱では、買取再販に係る不動産取得税、土地等に係る登録免許税・不動産取得税などのこれまでの特例措置が延長されました。併せて経済対策の一環として、住宅ローン減税特例措置の延長・拡充、住宅取得資金に係る贈与税非課税枠の据置き、商業地・住宅地等の固定資産税の評価替えにおける税額の据置きなど当協会が要望していた事項が全て措置されました。
 特に住宅ローン減税特例措置と贈与税非課税枠据置きについては、当協会として延べ約100名の国会議員に個別要望活動を展開し、面積要件「50m2以上」から「40m2以上」に引き下げられるという成果を生むことができました。対象となる取引、行為は限定されてはいますが、世帯構成やライフスタイルの変化に対応した良質で小規模な住宅に対する新たな需要を喚起することが期待されます。
 さらに、第3次補正予算では、高い省エネ性能の住宅取得者等が「新たな日常」等に対応した商品や追加工事と交換できるグリーン住宅ポイント制度が盛り込まれました。これらの措置は低迷する住宅投資に対し効果的な需要喚起につながり、住宅・不動産市場の活性化に寄与するものと思われます。
 5年ごとに見直される住生活基本計画がこの3月に閣議決定される予定ですが、良質な住宅ストックの形成についての議論が行われています。総世帯数5,400世帯と住宅ストック6,200万戸の数字を比較すれば、数の上では充足していますが、空き家850万戸、建替えが必要とされる不良ストック1,500万戸を差し引くと3,850万戸程度となり、良質な住宅が充分確保されているとは言えないのが現状です。
 現在、長期優良住宅や住宅性能評価制度の基準、手続きの見直しについても検討が進められており、耐震性能、省エネ対策、バリアフリー・IoT機能などを備えた良質な住宅への転換が求められております。また、政府は2050年までに温暖化ガスの排出をゼロとする「カーボンニュートラル」を打ち出しましたが、住宅の分野においても今後さらなる省エネルギーへの取組みが求められることになります。
 さらに、築後40年超のマンションは現在の92万戸から10年後には214万戸、20年後には385万戸に増加することが見込まれており、老朽化が進行します。適切な管理により資産価値を維持するとともに、建替えを前提とした税制、金融、関係法令を整備することが必要です。
 このように住宅に対する需要はますます多様化の方向にあり、コロナ収束後を見据えた新しい生活様式の視点からも住宅・不動産業界は多くの課題に直面しております。自然災害対策、長期優良住宅やZEHの普及、既存住宅の流通促進、リフォーム・リノベーションや建替えの推進、在宅勤務・学習やコワーキングスペースの確保、二拠点居住の推進、リバースモーゲージの普及や残価設定ローンの検討など新しい価値観に対応していく必要があります。
 全住協は、国民の豊かな住生活を実現するために、これらの課題に全力で取り組んでまいる所存です。全国1,700社を超える会員の英知と熱意を結集し、住宅・不動産業界を活性化することが消費者・国民の利益になるとの確信の下、皆様と共に力を尽くしたいと存じます。
 最後になりましたが、皆様方のますますのご発展とご健勝を祈念申し上げます。