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全住協リーダーに聞く~協会の課題と指針 (1)中京住宅産業協会 長崎守利理事長



中京住宅産業協会 長崎守利理事長

 住宅・不動産業界紙2紙による特別企画「全住協リーダーに聞く~協会の課題と指針」より、全住協を構成する全国の主要団体長と主要委員会の委員長のインタビューを随時掲載いたします。今回は、中京住宅産業協会(中住協)の長崎守利理事長(宝交通(株)代表取締役会長)。新型コロナウイルス感染拡大で不動産業界の先行きも見通しにくい中、今後の方向性について聞きました。

― 協会の成立ちは
 「1966年に日本分譲住宅協会の東海支部として6社で発足した。その後、名称変更や合併などを経て2014年に全国住宅産業協会東海支部から会員協会として独立し、現在に至る。当初は木造住宅会社が中心だったが今はディベロッパーや賃貸、流通など会員の業態も広がっている」

― 会員が増加傾向。どのような活動が奏功したのか
 「現在の会員数は95社(理事長就任時30社)。2か月に一度のペースで開催している例会では、担当会員が卓話し、その後の食事会で意見交換を行う。業界の動向や課題、展望などがリアルタイムに共有できる有意義な会として評価され、それが紹介につながっているようだ」

― 名古屋圏の市況は
 「直近の公示地価によると愛知県は住宅地が8年連続、商業地も7年連続で上昇した。特に名古屋の一等地の需要は高く、市場も活発な動きが続いている。名駅エリアをみると、1999年のJRセントラルタワーを皮切りに再開発が急ピッチで進み、現在もリニア新幹線開通への期待感からオフィスビル、ホテル、マンションの建設工事が活況を呈している」
 「栄エリアでもマンション供給が盛んだ。計画では今夏にはテレビ塔がホテルを持つタワーとして開業し、2024年には中日ビルの建替え、名古屋三越栄店も高層化計画を打ち出すなど、高層ビル群が建ち並ぶ街に変わる。そのほか中部の玄関口として人気が高い金山地区、トヨタの関連企業が多い三河地区、名古屋まで好アクセスの岐阜や大垣、四日市(三重県)、2022年開業予定のジブリパークを擁する長久手地区など注目エリアが多数ある」

― 住宅供給面の課題は
 「自動車を筆頭に製造業が盛んで、就業者の増加に伴い職住近接傾向が顕著だ。しかし比較的元気と言われる名古屋圏でも3、4年前からマンションの完成在庫が目立つようになった。理由の1つは供給過剰。もう1つは急激な建築コスト増に加えて再開発による期待感で地価が上昇し、一般サラリーマンには手が届かない価格になってしまったこと。特に名古屋都心部では、価格高騰が激しく敬遠ムードが漂い始めていた」

新型コロナの影響
― そこに新型コロナウイルス感染症が広がり始めた
 「住宅部材供給の停滞による工期遅延問題も相当な影響を及ぼしているが、不況によって売行きが鈍化すると、開発業者の借入負担がかさみ、価格調整が予想される。一方、働き方改革に着手しつつあった企業が感染抑止策として在宅勤務を実施しており、これが一気に進む可能性もある。住まい選びの基準が、駅からの距離ではなく生活インフラ重視へと変容していくことも考えられる」
 「新型コロナは、たった数十日で人々の生活と街を一変させた。不動産業界を震撼させている脅威がいつまで続くのかは未知だが、その一方では高騰しすぎた建築費や住宅価格が標準値に戻るという見方もできる。苦境の中にも必ず機運はある」

― 行政との連携は
 「会員から意見を吸い上げ、国土交通省と定期的に意見交換し、その結果を速やかに会員にフィードバック。研究・検証を経て政策提言するという活動を継続していく。また、区分所有建物の建替え問題や空き家によるスラム化、所有者不明問題などの喫緊の課題が山積しており、それらに対する施策と強制力を伴った法改正が急務だ」

― 今後について
 「不動産・建設業界だけではなく、異業種や大学等の研究機関も積極的に参画する組織を目指す。様々な立場、あらゆる視点で意見交換を重ね、新しい不動産ビジネスの構築や行政への政策提言等、地域経済の活性化に貢献できる活動をしていきたい」