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令和5年年頭所感

一般社団法人 全国住宅産業協会
会長 馬 場 研 治

 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

 新型コロナウイルス感染症の流行は、4年目を迎えることとなり、国内での累計感染者数は2,900万人を超えましたが、海外からの入国制限の緩和や感染者・濃厚接触者の隔離・待機期間の短縮、全国旅行支援の実施などにより経済活動の活性化が図られております。また、治療薬の開発や感染症法に基づく分類について「2類」からインフルエンザと同じ「5類」への緩和も検討されるなど、今後はさらに、感染拡大防止と社会経済活動を両立させる取組みが展開されるものと思います。

 経済状況を見ますと、ロシアのウクライナ侵攻に端を発したエネルギー、食料、原材料の高騰により世界的にインフレ傾向にあり、各国で金融引締めが強化され景気の回復ペースが鈍化しています。また、国内においても円安の進行による物価上昇や所得の伸び悩みにより、先行き不透明な状況が続いております。

 住宅・不動産市場については、新設住宅着工戸数はコロナ禍前の水準には戻っておりませんが、回復傾向にあります。一方で建築コストの高止まりや事業用地の取得難などの要因から都市部を中心に今後も住宅価格が低下することは期待できないのが実情です。こうした状況の中で一次取得者の住宅需要が停滞することが危惧されております。

 昨年12月に発表された令和5年度税制改正大綱では、新たに長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する固定資産税の特例措置が創設されました。現在、約686万戸のマンションストックがありますが、居住者の高齢化と同時に住宅の老朽化も進行しております。こうしたマンションを良好に維持するためには大規模修繕工事を定期的に行う必要がありますが、修繕積立金が不足し必要な工事が適切に行われない事例が見受けられます。背景には、居住者の修繕計画に対する認識の低さや年々上昇している修繕費用負担などの要因が考えられます。このたびの制度創設が良好なストックを次世代に引き継ぐための有効な第一歩となることを期待しております。

 また、買取再販で扱われる住宅の取得に係る不動産取得税の特例措置の延長、空き家の発生を抑制するための譲渡所得課税特例措置の拡充・延長、低未利用地の適切な利用・管理を促進するための長期譲渡所得100万円特別控除制度の拡充・延長、土地の所有権移転登記等に係る登録免許税の軽減措置の延長など当協会が要望した多くの項目が実現しました。これらの措置は、低迷する住宅投資に対し効果的な需要喚起につながるなど経済の回復に寄与するものと思われます。

 今年、日本の総世帯数は約5,420万世帯とピークを迎え、一方住宅総数は約6,540万戸に増加すると予測されています。表面的な数字だけを見れば、住宅総数が世帯数に対し、1,000万戸以上も余る時代が到来することになります。しかしながら質の面では次世代に引き継ぐ良質な住宅が確保されているとは言えません。空き家の有効な利活用やある程度の住宅性能を有する住宅をリフォームによって再生することはもとより、利用されることのない空き家を含め、耐震性が不足している住宅などの除却・建替えを推進することも重要です。

 2050年カーボンニュートラル、2030年度温室効果ガス2013年度比46%削減の実現に向け、建築物省エネ法が改正され、2025年度までに全ての新築住宅・非住宅の省エネ基準適合義務化など地球温暖化対策が強化されています。一方、昨年10月に住宅金融支援機構のグリーンリフォームローンが創設され、本年3月からは新たに創設された「こどもエコすまい支援事業」の申請受付開始が予定されるなど、具体的な支援策も打ち出されています。当協会としても実現に向けて、会員一同努力してまいりますが、急激な規制強化は、住宅の供給そのものに支障をきたすだけでなく、購入者へも過大な負担を強いることになります。目標達成のためには、購入者に省エネの必要性、そのための費用や将来的に還元されるメリットを理解してもらうことが肝心です。税制・金融・支援措置の拡充・創設、制度・手法の合理化・簡素化など種々の環境整備を講じる必要があると思います。

 その他、現状の住宅・不動産業界を見れば、所有者不明土地や増え続ける空き家の解消、地震や台風・集中豪雨など自然災害対策、世帯構成の変化や多様化するライフスタイルへの対応、二拠点居住の推進、既存住宅の流通促進、老朽マンションの建替え問題、不動産DXの普及促進など多くの課題に直面しています。当協会は、会員の特徴である全国区の機動力と柔軟性を活かし、国民の豊かな住生活を実現するために、こうした課題に全力で取り組んでまいる所存です。全国1,700社を超える会員の英知と熱意を結集し、住宅・不動産業を核とする日本経済の発展に寄与すべく、協会活動に邁進してまいります。会員並びに関係の皆様方の倍旧のご支援とご協力をお願い申し上げます。

 最後になりましたが、皆様方のますますのご発展とご健勝を祈念申し上げまして、新年のご挨拶とさせていただきます。